キ産業ハ天然ノ景色ト相俟《あひま》ツテ有志ノ志ヲ待チツツアル、牡鹿唯一ノ都ハ無意味ニ廃頽《はいたい》ニ帰スベキデハナイ、石巻恢復ノ策三ツアル」
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と、版下でも書くようにかっきりと書いて、その下に「平五郎」と銘を打ってあるのは、つまり平五郎という人の石巻観を率直に述べたものらしい。その次に「野老庵小集」とあって、
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風呂吹に酒一斗ある夜の会 木犀
風呂吹や尊き親に皿の味噌 其北
風呂吹を食へば蕎麦湯《そばゆ》をすすめ鳧《けり》 陽山
風呂吹の賛宏大になりにけり 平五郎
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 ここで句会を催した逸興であるらしいが、その次に、六朝風《りくちょうふう》の筆で、
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芒鞋布韈路三千(芒鞋布韈《ばうあいふべつ》路三千)
追逐看山臨水縁(追逐《おひおひ》に山を看《み》、水縁に臨む)
唱出俳壇新韵鐸(俳壇に唱へ出す新韵《しんゐん》の鐸《たく》)
声々喚起百年眠(声々に喚起す百年の眠り)
身在閑中不識閑(身は閑中に在つて閑を識らず)
朝躋鶴巓夕雲開(朝《あした》に鶴巓《かくてん》を躋《こ》え夕《ゆふべ》に雲開く)

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