あの娘さんとでは、やがて頭も尻尾も丸出しにするのは眼の前だ、或いは早く追手がかかってくれるようにと待っているかも知れない。これは、船頭君の腹立まぎれではいけない、拙者が行きましょう。拙者が行って、ズルズル襟首を持って引きずって来ます。ウスノロの奴めまた泣くだろう、大きな図体をしてザマはない」
「田山先生にあっちゃかないません」
 昂奮しきった船頭も、白雲画伯がウスノロを捕えて引きずって来る時の光景を想像して、多少おかしくなったらしい。
 そこで白雲は、駒井を促して言いました、
「駒井氏――では、そういうことに願いましょう、拙者ならば、旅には慣れているし、手形も持っている――ここまで来た以上は南部領へも足を踏み入れてみたい希望もある。この船の休養と修理の間を、拙者は右の通り一石……三鳥の獲物《えもの》のため、また旅に出ましょう」
 船の休養と修理のためにも、少なくとも約一二カ月はここに碇泊《ていはく》している必要を聞き知っている白雲は、ここでその期間を利用し、行方不明の二人の船族と、それからなお進んでは風景の見学と、つまりいわゆる一石三鳥の妙案を独断的に提出すると、駒井甚三郎も、
「では
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