、また海岸の方へと出てしまいました。
二十二
風流韻事《ふうりゅういんじ》で、いい気持になりきった田山白雲が船を漕《こ》ぎ戻させて、宿へ帰って見ると、果して非常事がありました。
お松から一伍一什《いちぶしじゅう》を聞き取った上、改めて瑞巌寺まで行って問いただしてみると、だいそれた、この「つわ者隠し」の天井に賊が潜んでいたのを、張込んでいた仙台の手のものに捕まってしまった。
たしかに捕まったのか――ええ確かに手を後ろへ廻されて縛られてしまいました。最初はずいぶん、暴れましたけれど、仙台の方に、仏兵助《ほとけひょうすけ》という親分がいて、それがとうとう右の怪賊を生捕ってしまったに相違ございません。
それを聞くと、田山白雲もがっかりしたが、お松のしおれ方は目もあてられないほどでありました。白雲はそれを慰めかねていたが――
「よし、お松さんの実見したところによると、果して七兵衛おやじが捕まったのか、疑問を存する余地は充分ある。捕まったにしても、つかまらないにしても、その罪状というのが明瞭でないのだから、いずれ放免されるにきまっているが、世間には人違いでヒドイ目に逢
前へ
次へ
全227ページ中148ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング