何人《なんぴと》か初めて月を見し
江月いづれの年か初めて人を照せし
人生代々窮まりやむことなく
江月年々望み相似たり
知らず江月|何人《なんぴと》をか照す
ただ見る長江の流水を送ることを
白雲一片去つて悠々
青楓浦上愁ひに勝《た》へず
誰《た》が家ぞ今夜|扁舟《へんしう》の子は
何れの処ぞ相思ふ明月の楼
憐れむべし楼上|月《つき》徘徊《はいくわい》す
まさに離人の粧鏡台を照すべし
玉戸簾中まけども去らず
擣衣砧上《たういちんじやう》払へどもまた来《きた》る
此時《このとき》相望めども相聞えず
願はくば月華を逐《お》うて流れて君を照さん
鴻雁《こうがん》長く飛んで光わたらず
魚竜|潜《ひそ》み躍《をど》りて水|文《あや》をなす
昨夜かんたん落花を夢む
憐れむべし春半《しゆんぱん》家に還らず
江水春を流して去つて尽きんと欲す
江潭落月《かうたんらくげつ》また西に斜めなり
斜月沈々として海霧《かいむ》に蔵《かく》る
碣石瀟湘《けつせきせうしやう》限り無きの路
知らず月に乗じて幾人か帰る
落月情を揺《うご》かして江樹に満つ
[#ここで字下げ終わり]
これだけの詩を一句も余さず、清澄の茂太郎が
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