ますよ」
「仙台の昔話が、そんなに面白いかえ」
「ええ、面白いですとも」
「話してみて頂戴、あたいは、面白くないと思えば決して辛抱して聞かないから」
「こちらへいらっしゃい、話して上げますから」
こうして老女は、茂太郎を自分に近いところへ呼び寄せて坐らせ、それから奥州の昔話をはじめました。
「むかしむかし、ざっ[#「ざっ」に傍点]と昔」
「むかしむかし、ざっ[#「ざっ」に傍点]と昔」
「あるところで婆《ばば》が座敷を掃いていたら、豆が一粒落ちていた。婆が拾うべとしたら、豆はコロコロと転がって行った。婆が拾うべと思って追いかけて行ったら、どこまでも転がって行くので、婆は『豆どん豆どん、どこまでござる』と言って道端《みちばた》の地蔵さんのお堂の中で見失ってしまいました」
[#ここから2字下げ]
豆どん豆どん、どこまでござる
豆どん豆どん、どこまでござる
[#ここで字下げ終わり]
茂太郎は声高く歌い出しますと、それを抑えて老女は語りつぎました。
「そこで婆は地蔵さんに、『地蔵さん地蔵さん、豆が転がって来《きい》えんか』と尋ねますと、地蔵さんが、おれ喰ってしまったとお返事をしたので、婆は帰
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