かんらんてい》の下から船を出すことにしましたから、おいでを願いたい――とのことです。白雲は胸を打ってよろこびました。
「田山先生」
そこへ、茂太郎とムク犬が馳《は》せつけて来ている。
「お前ドコにいた」
「五大堂で少し遊んで来ました。田山先生、これからまた、どこへかいらっしゃるの」
「うむ、お月見に行くのだ」
「まだお月様は出ていないじゃないか」
「うむ、これから船で沖へ乗り出すと、ちょうど月の出る時分になる」
「洒落《しゃれ》てるね――あたいをつれてって頂戴」
「うむ――」
「いいでしょうね」
「わしはかまわないが、人から招《よ》ばれたのだから」
「御招待なの? だって、かまわないでしょう、あたいとムクが先生のおともだって言えば」
「そうさなあ――」
「いいでしょう。さあ、ムク、これから先生のおともをして、船で松島のお月見としゃれこむんだよ」
「まだ、独《ひと》り決めをするのは早い、先方の同意を得た上でなければならん」
「先方だって、先生のおともだと言えば、いやとは言わないでしょう」
「あんまり騒々しくしてはいかん」
「お月見の御招待だから、お酒も出るでしょう、歌をうたっていけ
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