を見ねえ、第一あの黒船を見ねえ、鉄砲を見ねえ、早撮写《はやとりうつ》しの機械を見るがいい、切支丹の魔術でもなんでもねえんだ、みんな理窟から組み立てて行って、理詰めにして編み出した仕事なんだ、荘周や馬琴なんぞは甘めえもので、ありゃお前《めえ》、頭のてっぺんから出たうわごと[#「うわごと」に傍点]に過ぎねえが、異国のやつらときた日にゃ、いちいち物を理詰めに見て行くからかなわねえ、お前たちは知るめえが、(その実、先生もどうだか)このごろ異国のやつらは蒸気車というやつをこしらえやがったぜ、つまり陸蒸気《おかじょうき》さ――黒船を陸《おか》へ上げて蒸気の力で車を走らせようというんだから変ってらあな、只は動かねえよ、陸の上へ鉄の棒を二本しいて、その上をコロコロッと転がすんだ、そうすると瞬《まばた》きをする間に千里も向うへ突っぱしってポーッと笛を鳴らすという仕掛なんだぜ、そりゃお前、途中の山だって、川だって、その勢いでみんな突き抜いて通るんだぜ。
だから、お前、その伝で理詰めに機械さえ出来りゃ空が飛べねえという話があるものか、海の上だってああして黒船が突っ走るじゃねえか、陸の上だって、山のドテッ腹
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