7は鍵
8は瓢箪《ひょうたん》ポックリコ
[#ここで字下げ終わり]
茂太郎はこんな出鱈目《でたらめ》の下に、文字を書き且つ習いつつあったが、
「さあ、皆さんがよく御勉強をなさいましたから、今日はこれでお休みの時間にして上げます、お休みの時間には、わたくしが踊りをおどってごらんに入れます」
先生を圧迫して、自分が放課を宣告し、右の手を差す手、引く手にして足踏みおかしくはじめると、乳母の膝なる登が笑いました。
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登様が笑いました
登様が笑いました
登様が御機嫌よく笑いました
わたしの踊りを見て笑いました
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茂太郎はこう言って、今度は頭の上にのせておいた般若の面を顔へおろして、登の前へ出す。登がイヤイヤと言って泣き出しそうになる。
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ああ、登様が泣きます
泣きます――
ではよしましょう
別のを踊りましょう
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と口拍子で言いながら、般若の面を小脇に抱え直し、
「マドロスさん、ハーモニカを吹いて下さい、わたしが踊ります、でなければフリュートをつき合って下さい、越後獅子を踊りましょうか、さあ皆さん、
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