がまたこれに答えました、
「池田先生、あなたは平田篤胤大人なんぞを引合いにお出しなさる心持がもういけません、あの人を学者とお思いなさるか知れないが、あの人は本当の学者ではありません、議論家のようで、理窟屋の部類を出ない人なんですからね、まして本当の神道家でありようはずはありませんよ、日の神の恵みを本当に身に受けた行者でもなんでもありません、日本の古神道の道を唱えた功はありましょうが、神徳を実際に身に体験した人ではないのですよ。そこへ行くと両部もいけません。では、日本で本当に天照大神のお光をわが身に体験した先達《せんだつ》は誰かとお尋ねになれば、それは黒住宗忠公でございますね。あなたが神の道を学びたいとのお心なら、それはどうしても黒住宗忠公から出立なさらなくてはいけません、平田|大人《うし》ではお話になりませんよ」
そこへ弁信が口を出して、
「わたくしは、平田篤胤大人というお方はお名前は承っておりますが、まだその御著書を拝承したことはございませんから、果して神主様のおっしゃる通り、学者であって本当の学者ではなく、議論家であって、理窟屋の範囲を出でないお方で、また果して真に神道を体得した
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