井を案内して、以前の爆発の場所へ連れて来ました。
そのあたりは、一面に煙硝《えんしょう》の臭気はするが、火は消えてしまっている。外部からもなんら闖入《ちんにゅう》の気色はない。提灯を点《とも》して用意深く検分した結果は、七兵衛を驚かした火の玉なるものは、大砲を打ち込んだわけでもなければ、爆弾を投げたのでもなく、この辺でよくやる花火の筒をこちらへ向けて打ちこんだのだから、どう間違っても、ボヤか、火傷以上の害を加えるものでないということを駒井は見届けたけれども、その時、石垣の下から、塀、逆茂木《さかもぎ》から海辺へかけての生田の森が、ワッと喚声でわき上ったことです。同時に、一帯がうすら明るくなると共に、二発、三発と続いて轟然たる爆発の音が起りました。
ズドーン
ズドーン
といっても、本来はコケおどしで、海岸で急に花火を揚げ出したまでのことですが、その花火も示威脅迫の音を含んでいることは勿論《もちろん》で、今の二三発は確かに上へ向けて放ったが、やがてその次は、また最初のようにこちらへ向けて飛び込ませないとは限らない。
この分では、今夜こそ彼等は、焼打ちをはじめるかも知れない、こちら
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