は比較にならない、訓練の欠けた代物《しろもの》ではあるけれど、ただ一つ感心なのは、親熊の毛皮を忘れないということだけで、ためしにほかの毛皮を投げ込んでやっても、それは見向きもせずに、親の毛皮をのみ後生大事に守り、それにじゃれついて喜んでいる。
 その点だけが、ただ米友を、眼を円くして唸《うな》らせるだけのものでした。
 一通り熊の世話を焼いてしまってみると、さあ時分時《じぶんどき》だ――これからひとつ道庵先生のために、弁当を運ばねばならぬ時だと思い出してきました。
 発明製作に没頭しているといえば、感心なようだが、弁当をわざわざ遠方から運ばせてまでも、没頭しなければならないほどの多忙がどこにあるか、その理由はわからないながら、とにかく、毎日、この時間に、このくらいの弁当を持って来な、と言いつけられている通りを、米友の責任観念がなおざりにせしめてはおかないのです。
 しかるべき重箱の中に詰めた弁当が、例によって窃《ひそ》かに風呂敷に包んだまま差廻されているのを、米友は無雑作に首根っ子へ結びつけ、
「じゃあ熊公、行って来るぜ、おとなしくしてな」
 こう言って縁側へ出て用意の杖槍をとると、沓
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