しかし、遠かろうとも、近かろうとも、あの美少年が清洲にいることは事実で、そうして上方へ行く途中にはぜひ立寄ってくれ、立寄りますと言葉を番《つが》えてあることも事実なのだから、お角はお銀様にそのことを打明けて、それならば明日出立、清洲のあの方のおいでになるところをお訪ねしての上、万事は、わたしが取計らってお目にかけましょうということで結びました。
 そうして、自分の座敷へ帰ったお角さんは、煙管《きせる》を投げ出して、苦笑いが止まりません。
 近頃お話にならないお取持ちを頼まれたものだが、どちらもどちら、まあ何という難物と難件を一緒に背負いこんだことか、ばかばかしいにも程があると、一時は呆れ返ったが、そこはお角さんだけにガラリ気のかわるところがあって、そうさねえ、また考えようによっては面白いじゃないか、あの綺麗で気性《きっぷ》のいい若衆を、こっちのお嬢様に押しつけてみるのも面白いことじゃないか――お夏は清十郎、お染は久松と相場がきまり、色事も型になってしまってるんでは根っから受けないね、お銀与之助なんていうのも乙じゃないか、一番ここいらを骨を折ってみたらどんなものか、お角さんの腕の振いどころというのも妙なもんだが、ちっとばかり変った取組みさねえ。だがねえ――何と言っても、こっちのお嬢様が役者が上だねえ。きれいで、腕が利《き》いて、目から鼻へ抜けた子ではあるが、何といってもまだねんね[#「ねんね」に傍点]だからねえ、やがてお嬢様が食い足りなくなって投げ出さなけりゃいいが――だが、そうなったあとが、またまんざら捨てたものじゃないからねえ。
 お嬢様のしゃぶりっからしだって、まだまだあの子あたりなら、だしがたっぷり利きますからねえ、やりましょう、やりましょう、ひとつやってみましょう。
 お角さんはあわただしく、また煙管を取り上げて悠々と煙を輪に吹きました。

         四十五

 あんなようなわけで、飛騨の高山の空気が悪化すると同時に、平湯の景気が溢《あふ》れてきました。
 高山から平湯までは八里余、かなりの道程《みちのり》ですけれども、高山では遊びにくいものや、この際、保養を心がけるもの、或いは他国の旅人らが一時の避難として平湯の地を選ぶ者が多かったものですから、急に景気が溢れ出してきたということを聞き伝えて、高山を中心としていた芸人共がまた競って平湯の地に入
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