なことを言うお嬢様だろう。平常《ふだん》おすすめ申してもなかなか人中へはお出なさらないくせに、明日という日は、進んで磔刑のおしおきを見物に行くのだという。いったい、誰がそんなことをこのお嬢様に焚きつけたのだ、縁起でもない!
 お角さんは、腹の中から縁起でもないと感じました。
 お角さんは、あれほど太っ腹な女のくせに、こんなことにかけては感情が細かいので、不吉なものや、不浄なものをいやがり怖れることが普通以上なのは、一つは商売柄であるところへ、女の弱気の方だけがその辺に集まるものですから、御多分に漏れぬ大のかつぎ屋なのです。
 ですから、今日明日という出立の日、しゃん、しゃん、しゃんとやりたいところへ、出がけにこのお嬢様が故障を唱えるだけならいいが、言うことに事を欠いて、磔刑を見に行くなんて言い出したものですから、その心中の不快といったらありません。
 けれども、お角さんという人は、お銀様にとってどうしても先天的に一目置かなければならないようになっていることは、前にしばしば見えた通りであり、いくら腹がたっても、お銀様の前でばかりはポンポン言うわけにはゆかず、先方に高圧に出られるほど、こちらが腫物《はれもの》に触るような気分を濃くしてゆかなければならない因果のほどは、今日までの例が示す通りです。
 結局、お角さんは、どうしてもお銀様の御意に従わないわけにはゆきませんでした。
 しかし、こういう場合でも、見物に行くところが行くところでありさえすれば、たとえばついでに長良川へ鵜《う》を見に行きたいとか、犬山の提灯祭《ちょうちんまつり》を見たいとかなんとかいうことであれば、そこは進まないながら、お角さんもぐっと呑込んで、「ではお嬢様、せっかくのことに、わたしもおともさせていただきたいものです」とかなんとか出るところだが、磔刑《はりつけ》を見に行くということでは、お角さんはどうしても乗り気になれませんでした。乗り気になれないばかりではない、七里ケッパイというような気がしてお銀様の話から、自分の座、そこら一面になみの花を撒《ま》いてやりたいほどなのを我慢して、
「そういうことでございますならば、よんどころございませんから、明後日《あさって》ということにいたしましょう、明後日なら、キットよろしうございましょうね」
「はい、明後日あたりならば……」
「そんならぜひ、明後日にお立ちを願
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