をする奴でなければ、日本には英雄が無いように、子供の時分から教育がそう教えこんでいるようなものだ。そこで君たちはじめ、日本人のこしらえた歴史は、まるで材木だけで組み立ったガランドウみたようなものだ、骨組みだけはどうやら出来ているが、壁も無ければ障子もない、まして室内の装飾と、調度なんというものは全然頭に無いのだ、日本の国家というものは、材木だけで出来ているように教えられているから、歴史を語っても、人物を論じても、その辺で、おおよそ種子が尽きてしまう。人間の住む家として、骨組みばかりのガランドウが何になる、人間らしい家は、人間らしい内容を持たなけりゃならんのだ。時代は英雄豪傑に骨組みだけを作らせるかも知れないが、その内容整斉というものは、全く違った人々の手にあることを君たちは知らない。知らないのは、教育が知らないように仕組んでいるのであって、天が不公平に一方に多く与え、一方に多く惜しんでいるのではないのだ。いつの時代でも必ず、君たちの知っているいわゆる通俗の英雄豪傑のほかに、やはり英雄豪傑ではあるが、君等の知る通俗の英雄豪傑に優るとも劣ることなき偉材が存しているものだ、それがいわゆる通俗
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