、初めは、見るのもけがれのようにいやがっていたものが、贔屓《ひいき》にされてるうちに、だんだんよくなって、よくなって、こっちが熱くなり……」
「もう、よせ、それはらしゃめん[#「らしゃめん」に傍点]という奴だろう、日本に生れても、日本人の部じゃないのだ」
「らしゃめん[#「らしゃめん」に傍点]なんて、悪口を言うけれど、世話になった女の人に言わせると、異人は情が深くって、実があって、それにお金は糸目なしに本国から来る、宝石や、羅紗《らしゃ》は好きなのが選取《よりど》りに貰える、ほんとうに異人はいい、異人さんに限る……」
「してみると、お前なんぞも、そのらしゃめん[#「らしゃめん」に傍点]向きに出来ている一人だろう」
と言われて、はしゃぎきっていたお絹が、ふくれ出し、
「何をおっしゃる」
「お前もひとつ、その情け深くって、実があって、お金は糸目なしに本国から来て、宝石でも、羅紗でも買ってもらえる奴を一人二人、相手にしてみたらどうだ」
「いやなことをおっしゃいますねえ」
「お前というイカもの食いも、まだ毛唐を食ったことはあるまい」
「お気の毒さま……それよりは、そちら様こそ、異人館へ行って、
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