お腹のすいていたということをさとる始末です。
それでも、お雪ちゃんにしても、久助さんにしても、お救《すく》い米《まい》を貰いに行く気にはなれないのです。こんな非常の際とはいえ、なんだかきまりが悪くて、風呂敷や、袋をさげて、焼跡へお救い米をもらいに行く気にはなれないが、さりとて、着のみ着のままで、焼け出されの旅の身、親類が一人あるというわけではなし、明日からの当座の宿所はお寺ときまっても、それから後がまた心配です――故郷までは長い道のり、たよりをすることも、金を取寄せることも、この場合、間に合うはずがありません。
よし、忍んで、お救い米にありついたとしてからが、それが幾日つづこう。
路用や、貯《たくわ》えの一切を焼いてしまった上に、せめて、頭の飾りとかなんとかひとくさでも残っていれば、多少とも急場を救うの金目にならないとも限らないが、それすら無いのですから、一時はこうして人の好意につながっていても、不安が目の前についている。
どうしても、何とか当座の凌ぎをつけておいて、久助さんを国へ立たせなければならぬ。
久助さんを国へやるか、この地で飛脚を頼むかするよりほかはないが、飛脚では
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