歴史を以て指し示すと、その位置よりは、伝説としての空想の方に、頭を取られてしまいます。
駒井に教え込まれて、茂太郎の星を見る想像力が、グッと別なものになりました。
彼はすでに、古人によって定められた星座の形に満足しないで、なおなおさまざまのものを見るようです。星と星との距離と、連絡をたどって、古人が定めた以外の、さまざまの現象を描いてみることを覚えました。
そうして、科学的に教えられた星座のほかに、自分の頭で、それぞれの星座を組み立て、それに命名をまで試みているようです。
その命名も、たとえば、拍子木座と言い、団扇座《うちわざ》と言い、人形座と言い、大福帳と言い、両国橋と言い――そうして、毎夜毎夜、その独特の頭を以て、星座を眺めては、即興的に出鱈目《でたらめ》の歌をうたうことは少しも改まりませんから、駒井が呆《あき》れてしまいました。
せっかくこの即興的の出鱈目を、科学的に矯正《きょうせい》してやろうとしているあとから、教えられた知識を土台にして、また空想の翼を伸ばすのだからやりきれません。
しまいには、ただ、自分が天体を観察している時、望遠鏡にさわることを恐れて、近くで足
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