大菩薩峠
勿来の巻
中里介山
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)団扇座《うちわざ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)海樹|簫索《せうさく》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「口+下」、25−3]
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一
駒井甚三郎は清澄の茂太郎の天才を、科学的に導いてやろうとの意図は持っていませんけれど、その教育法は、おのずからそうなって行くのです。
駒井は研究の傍ら、茂太郎を引きつけて置いて、これに数の観念を与えようとします。
天文を見る時は、暗記的に、星座や緯度を教え、航海術に及ぶ時は、星を標準としての方位を教え込もうとするのを常とします。
茂太郎は教えられたところをよく覚えることは覚えますけれども、駒井の期するところのように、その頭が、数と、理で練りきれないのは、不思議と思うばかりでした。
たとえば、星座を数える方便として、支那の二十八宿だの、西洋のオリオンだの、アンドロメダスだのというのを、形状と、
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