傍点]の面を燈《あかり》にうつむけながら、嬉しそうな色を見せず、口数もあんまり利《き》かないところは、見上げたものだと思わせました。
「ぎゃくらっきょう」というのは、逆蛍《ぎゃくぼたる》とか、裏天《うらてん》とかいったように、安直の面《かお》が、らっきょうを逆にしたようなところから出た、口の悪い通り名であろうと思われる。
 かくて、安直と、金十郎の行を壮《さか》んにすべき送別の宴は、夜の更くると共に、興が尽くるということを知りません。



底本:「大菩薩峠12」ちくま文庫、筑摩書房
   1996(平成8)年5月23日第1刷発行
底本の親本:「大菩薩峠 七」筑摩書房
   1976(昭和51)年6月20日初版発行
※底本では、「…喧嘩を売りたがるお角さんではないのだが、」と「…いつまで経っても、それが解《げ》せないのです。」の後に、改行が入っています。
※疑問点の確認にあたっては、「中里介山全集第七巻」筑摩書房、1971(昭和46)年2月25日発行を参照しました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki

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