には恐れ入ったが、それをお前に任せることは、お前をまたあのマドロスの運命にすることだ、いわば一つで済む犠牲を、二つにするようなものだ」
「わたくしの方は、どうなりましょうとも、決して殿様に御迷惑をおかけ申すようなことは致しません、もしおまかせがなければ、私も乗りかかった船でございますから、私の一了見で、ひとつ出かけてみたいと思いますから、見ぬふりをあそばしていただきたいものでございます」
 そう言われて、駒井は全くこたえたように七兵衛の面《かお》に眼を注ぎました。
 不思議の男だ。見かけはどう見直しても質朴《しつぼく》なお百姓に過ぎないこの男、義気だか、客気だか分らないが、飛んで火に入る勇気を十二分に持ち合わせている。
 満身これ胆とはこういう男をいうのかしら……今こそお百姓の風をしているが、若い時分には長脇差の柄《つか》を握って、血の雨の中をくぐり歩いた男かも知れない。
 ともかくも妙な場合に来合わせたものだ。
 こういう男に限って、行くなと言ってもきっと行く、これはともかく任せてみるよりほかに仕方がない、と心を決めました。

         六十六

 清洲の山吹御殿の銀杏《ぎん
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