す。
 先日逃げ出した時、あのマドロスが、あちらの縄張りの中で鶏を盗《と》ったとか、着物をかっぱらったとかいうことがあったそうです、それをとっこ[#「とっこ」に傍点]に取って、そうして今夕の狼藉《ろうぜき》が起ったのです。
 ですから、あのマドロスはいわば人質で、どうも本当の目的は、駒井の殿様の方にあるようでございます。
 殿様に向っては、直接《じか》に鋒を向けられないから、それでマドロスさんとやらを奪い取ってオトリにしようというのは、あの社会の奴等のよくやる手です。
 え? あのマドロスさんとやらの行方ですか、それはちゃんと知っております、その洲崎の親分の家の土間にひっくくられているんでございます、それを明日は天神山へ連れ出して、そこで焼き殺すのだと、こう言っておりました。
 ええ、それはあいつらのことですから、やりかねないことでございますよ。何しろメリケンの方の国では、文明国だなんぞと言いながら、黒ん坊をとっつかまえて、生きながら焼き殺すという話ですから、その伝でひとつ、あのマドロスを天神山で焼き殺してしまおうではないか。
 なあに、毛唐の、切支丹の、ヤソの、日本の国を取りに来る廻
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