後には、有力なる官辺の影と、迷信の力が無いではない。
このたびの事を機会として、その反動の側の勢力がはかって、不意に来たのだな。不意に来たとはいえ、この暴行には相当根拠がある、後ろだてがあるということを駒井がさとってしまって、この結末は相当面倒であり、手数がかかると思案しました。
そこへ帰って来たのは七兵衛です。
七兵衛は駒井の前へ、次の如く報告しました。
「これはなかなか大事《おおごと》でございます、マドロスさんとやらを奪い出したのは、この土地の村人の仕業《しわざ》ではございません。
あれは、この界隈きっての博徒の親分、洲崎のなにがし[#「なにがし」に傍点]という奴の子分共の仕業でございますぜ。それもまた、洲崎の親分だけがさせたのではありません、そのうしろには黒幕がありますぜ。
とにかく、殿様がこの土地へおいでになって、そもそもの初めから、嫌な眼で見ていた奴がございます。
それが、殿様が仕事をお進めになればなるほど、怪しい眼を光らせていたものでございます。
それにはお上役人の筋を引いているものもございます、土地の昔からの家柄の者もございます、お寺の信者や、神様の氏子、
前へ
次へ
全514ページ中492ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング