り悪いことをしたから、造船所の人たちなんかは憎がって、海の中へ投げ込んでしまおうと言ってました。そのくらいですから、ああして、本当に心が直るまで手をつけない方がよかろうということです」
「困ったものですね」
「え、こんどのことは私たちもお詫びのしようがないから、うっちゃって置くのです」
「そうですか、でも船が出来上った時は、あの人も連れて行くのでしょう」
「そのことはわかりませんね」
その時、このところにあった時計が、五ツ鳴りました。七兵衛はこの音で初めて時計に気がついて、そしてなんだか分らない顔をして時計を眺めました。
「ああ五時だ、おじさん、私はちょっと行ってまいりますよ」
こう言って茂太郎は、この室を飛び出してしまいました。
六十五
あとに残された七兵衛、お茶を飲みかけていると、急にまた例の物置の方面で、けたたましい叫び声がして、人がののしり、号泣し、容易ならぬ騒動が持上ったもののようです。
七兵衛も一度は駈け出して見ようかと思いましたが、そのうちに噪《さわ》ぎはようやく静まり、人も出て行ったようですから、また腰を落着けていると、そこへあわただしく茂
前へ
次へ
全514ページ中488ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング