して、何十頭というほど群がり出し、それが遠くから畏《おそ》る畏る、ムク犬の雄姿をながめていたのが、ようやく、なついてくると見えて、だんだんちかよって来ると、ついに皆、ムク犬の前後左右に尾を振って、これに朝するの有様でありました。そこでムク犬が動くと群犬が従う。
 何と思ったか、この時、ムク犬は、主を離れてやや早足に、丘陵をかけのぼると、群犬がまた挙《こぞ》ってこれに従う。
 かくて、ムクが上れば群犬も上り、ムクが止れば群犬もとどまり、ムクが走れば群犬も走る――それに興を催してか、ムクと、群犬とは、この人間たちとは遥かに離れて、やがて行方を見せなくなってしまいました。

         六十一

 その同じ日の同じ時刻に、ちょうど、東妙和尚や与八が梅を買っているところの裏山で、一人の百姓がしきりに薪をこしらえておりました。
 ところは、ひっそりとした雑木林。木を伐《き》る音がこだまして、いよいよ森閑を加える趣の山林の中に、たった一人で精出して、手頃の木を伐っては、その太いところをマキにこしらえ、枝のところをソダにしている。
 これは木樵《きこり》ではありません。あたりまえのお百姓が農閑
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