のが吉日ということもありますから、わたしは、これから大急ぎで身のまわりのとりまとめにかかります。
この次の手紙は、平湯で書いて上げるか、白川で書くことになるか、そうでなければ畜生谷――決して、そんなことはありませんけれども、もしや、道を踏み迷った時は――
弁信さん――
あなたに向って、助けを呼びますから、そのつもりで始終、勘を働かせていて下さいましな」
[#ここで字下げ終わり]
五十七
名古屋へ来て以来、道庵先生の持て方が非常に過ぎていましたから、そうでなくてさえ、いい気持の道庵を、全く有頂天《うちょうてん》にさせてしまいました。
破格中の突飛なるもの――名古屋城天守閣の登臨を特許されたことは別問題として、あちらでも、こちらでも、在名古屋一流の名士、風流者、貧乏人といったようなものが、道庵を招請するの会の絶え間がない。
今夕しも、尚歯会《しょうしかい》が発起で、道庵先生を主賓として、長栄寺に詩歌連俳の会を催すことを企て、その旨、先生に伺いを立てると、一も二もなく臨席を承諾してしまったものです。天守閣登臨の特許の筆法によれば、今夜の尚歯会の席には、也有、集木軒
前へ
次へ
全514ページ中429ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング