です。
白川郷のもっと奥か、その途中か知れませんけれど、そこには畜生谷というところがあるそうです。
そこにも、幾人かの人間が住んでいるのだそうです。
そうして、そこにも、やはり平家の落武者の伝説が残っているのでございます。そうだとすれば、由緒正しい高貴の人の胤《ちすじ》も残っていないというはずはありますまい。それだのに、ナゼ人が畜生谷なんて、いやな名をつけるのでしょう……
それとなく、たずねてみますと、その谷では、親子、兄弟、姉妹の別が無いのだそうです。全く忌《いま》わしいことではありますけれど、最初のその谷へ落ちて隠れた人たちが、二人であったか、三人であったか、極めて少数の人でありましたでしょう。それが時を経て谷にひろがるまでには、どうしても近親の間で結婚ということが行われて、それが習いとなって、その部落の間だけでは、あやしまれないことになっていなければならないかも知れません。
自然――畜生谷――なんだか、たまらないいやな感じも致します。
人の噂《うわさ》ですから、よくわかりませんけれど、そこでは他人と親族との区別が、ほとんど無いそうです。肉親の兄弟、姉妹が、自分にその夫と妻とを選ぶ
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