、自分たちが弱いから、信念が無いから、それで世間というもののために圧迫されて、この白骨の谷まで押しつめられてしまったのじゃありますまいか。
いつか、申し上げた、イヤなおばさんから、わたしはイヤなことを言われて、もう世間へ面向《かおむ》けができないほどに、イヤな思いをさせられました。一時はどうしてやろうかと思いました。こんな山深いところにいてさえ、自分の身の置きどころの無いことを考えて、出る人、来る人に気兼ねをして、温泉に来ていながら、この肌を誰にも見られまいと苦心するなんぞ、なんという愚かなことでございましょう。
それが、白川村の話を聞いているうち、そうして、いよいよ、その白川郷まで入ってしまおうと決心した時、そんな気兼ねや、羞恥《しゅうち》が、一切合財サラリと取払われてしまいましたようです。
国へ帰って、もと通りの生活をし、やがて世間並みの女としての、きまった生活を予想すればこそ、いろいろの煩悶《はんもん》もありました。
白川入りをすれば、その点は、全く解放されてしまいます……
弁信さん――
勝手なことや、夢のようないいことばかり言っておられません。イヤなことも書かなければならないの
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