が多くて、なんとなしに不安を感じますから、あんまり冬の厳しくならない以前に、ひとまずここを立ちのいた方がよかろうと思います。これは誰にもすすめられたのじゃありません、わたしが思い立って、わたしが、ひとりできめてしまったのです。
これでも、わたし、思い立てば、きっと、それを実行に現わしてお目にかける自信は持っておりますのよ。
では、ここを立って、どこへ行くとおっしゃりますか。
松本の方へ出るのが順でございますけれど、それでは帰り道になってしまいます。わたしは、家へ帰るためにこの白骨を出ようとするのではございません。
とりあえず、ここからは、程遠からぬ、そして山と山の間道を行けば、道もそんなに険しくはないところを通って、飛騨《ひだ》の国の平湯というのへ、ひとまず落着いてみようと思います。
けれども、平湯は――同じ山里ではあるけれど、ここと違って、平地になって人家も多いし、人の出入りも一層はげしいと思いますから、そこにも落着いてはおられないだろうと思います――
それでは、どちらへ行きますか。山をなお奥へ入って行きますと、白川の郷というところがあるそうです。
そこは何人にも秘められた理想の里で
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