て、暫く泊っているにはいるけれど、京大阪から田宮の方まで行くかも知れません」
「そうですか、じゃ、また途中で出逢《でくわ》すかも知れねえね」
「ええ、途中ばかりじゃない、明日は名古屋で、また逢えるかも知れません」
「旅は道づれ――と言ってな」
米友がこう言ってバツを合わせました。旅は道づれの意味が、米友にはよく徹底していなかった――が、この場合、やむを得ず、有合せを使用したものらしい。
「ええ、旅は道づれ次第のものですね」
それを婦人が、気安く、また意義ある取り方をしてくれたので、米友も助かり、
「姉《ねえ》さんも、一人じゃあるめえね、連れがお有んなさるんでしょう」
と、米友も如才なく合わせました。最初にはおかみさんと言い、今は姉さんと言う、この点米友も多少考えたらしいけれども、この姉さんは以前と変らず、
「ええ、幾人も連れはありますけれど、気の合わない時は、連れがあるより、一人の方がようござんすね」
「それもそうだろうが……男と違って女というやつは、めったに一人じゃあ旅ができなかろうから、かわいそうだ」
「そうでもありませんね、気が合わないくらいなら、やっぱり一人がようござんすよ
前へ
次へ
全514ページ中411ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング