申したことがあったっけ。その翌朝、親切な寺番に見つけられ、叱られもせずに、温かい御飯と、温かい味噌汁とを振舞われたことがあったっけ。
その覚えのある道だ。
そうだ。だが、今、ようやくその寺の名を思い出すくらいだから、土地の名もさっぱり記憶はしていないが、やっぱり、熱田の宮から程遠からぬところであったとは、うろ覚えに覚えている。
とにもかくにも、昔なつかしいあのお寺の門前まで行って見てのことだ。
やがて、さまで大きからぬ古寺の門前。
たしかにここだ。
ここに堀があって、そこに門があって、宝塔があって、護摩堂があって、突当りが本堂で、当時、自分が御厄介になったのは、あの地蔵堂の下で、わざわざ朝飯の御馳走をしてくれたのは、護摩堂の後ろの小さな家にいる老夫婦だった。
ははあ、それではこの寺が「笠寺」といったのか。
今日この頃も、いろいろ心配はあるが、あの時に比べれば、頼るべき人と、宿るべきところに事を欠かないだけが、せめてものまし[#「まし」に傍点]というものか。しかし、あの時、東をめざして進んで行った憂き旅の間にも、何か希望のようなものが前途にあって、旅は辛《つら》いながらも
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