ぶ》を一株、根こそぎ引きぬいて、さっと表道へ引上げる。
 それから、松林の間の細い道――土を落して皮をむいて、歩きながらがりがりとかじる、一本のさつま薯。残りの分は、木の枝でからげて腰にブラ下げて歩み行くと、その林の間から思いがけなく人の気配。
 ようやく人間にありついた、見られない先に、こちらから断わろう――畑荒しと見られてもつまらねえ――
 現われ出でた漁師に向ってたずねるよう。
「ここは何というところダエ」
「エ?」
「いったい、ここは何というところなんだね、尾張の名古屋へ出るには、どっちへ行ったらいいんですかね、名古屋へ帰りてえと思うんだが」
「名古屋へ……では、一度鳴海の本宿へお出なさい、その方がようござんすよ」
「鳴海……鳴海潟というんだな、昔から名前だけは聞いてらあ、そうかなあ」
「鳴海の本宿へ出て、それから東海道を真直ぐに行けば名古屋へは間違いっこなし――宮へ出るのもいいが、はじめての人にはわかりにくいから、いっそ、鳴海へ出ておしまいなさいよ」
「そうかね、では、そういうことに致しましょう。鳴海から名古屋までの道のりは知れたもんだろうなあ」
「三里だよ」
「どうも、有難
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