込まれてしまったのは、全く見ていられない。暫く、浅い川の中に、浮きつ沈みつしていた件《くだん》の若ざむらい二人は、それでも命からがら起き上り、向うの岸へのたりついて、這《は》い上り、水びたしになり、打擲《ちょうちゃく》に痛むからだで、びっこを引き引き向うの道へ、のたりついて行く、その姿が消えるまで、衆人環視の間にさらされたのは、自業自得とはいえ、悲惨の極みといわねばなりません。
 それを、ザマあ見やがれ! という表情で見送っていた料理屋連――その親方は、二人の悪ざむらいから奪い取った大小をからげて、
「こいつは、会所へ届けておかにゃならねえ」
 荷かつぎに持たせているところへ、贔屓《ひいき》の相撲連がやって来て、そうして彼等一同は、やはり勝ちほこった気持に充ち満ちて、相撲小屋の方へ引上げてしまいました。
 一切の事情を、目《ま》のあたり見ていたお角さん――いよいよいけないと思いました。筋から言えば、道理はこちらにあるに相違ないが、お角の眼では、料理屋連の出ようが、やり過ぎていること――これがこれだけで済めばいいようなものの――済むはずがない。それを存外、買方は気にかけていないようだが、
前へ 次へ
全514ページ中372ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング