広場です。お銀様も快く駕籠を出て、茶屋から借りた草履《ぞうり》を穿《は》いて、盛んに景気を立てている相撲小屋の方へと、石ころ道を歩きはじめました。
 先に立ったお角のキビキビしたのと、連れの若衆《わかいしゅ》も、気負いと老巧なのを三人つけていたのが、一緒になって歩き出しました。
「ねえ、お嬢様、あの幟《のぼり》の一つをごらんなさい、舞鶴駒吉てのがございましょう、あれはね、駿河の生れで、そうですね、安政六年の春でしたか、回向院《えこういん》へ来たことがありますよ。回向院へ来る前から、わたしは知っていました。こっちの物にしようと考えているうちに、相撲に取られてしまいました。相撲に取られるのが本筋なんでしょうけれど……何しろ、その時に八歳《やっつ》で、二十五貫目からありました、相撲のうちでも、めったにあんなのは出ません。その後、どうなったかと思っていたら、ごらんなさい、あの幟がそれでございますよ。まあ、あんなずう体[#「ずう体」に傍点]を見ておくのも学問になりますから、ひとつあの子に会ってやってみて下さいまし」
 お角がお銀様にこんなことを言いました。
 この時分、後ろの赤坂の方面から来るの
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