久助さんだけにあやまれば済みます。けれども、わたしが心を決めてやる以上は、決して、やりそこなうようなことはしませんよ。もし、やりそこなうようなおそれがあれば、やらないうちにやめてしまいます。とにかく、わたしに任せてみて下さいな、ねえ、先生」
「それほどまでにして、ここを出たいの?」
「ええ、それは、あなたのためばかりではございません、わたしのためにも……来る人、来る人が、どうも、あなたを探しに来る人に見えたり、また、わたしをさぐりに来る人にばっかり見えて、たまりませんもの……白骨は、もう落着きません、どうしても、白川まで行きたいと思いつのりました。白川ならば、平家の落武者ではありませんけれど、永久に、わたしたちの身を隠すことができましょう――わたしたちばかりでなく、子供たちや孫の代まで、落着いてこの生を託することができるというわけではありませんか。ああ、白川へ行ってしまいたい、ねえ、先生、御同意ください、いいでしょう、この白骨を脱け出すことに御同意をして下すって、その方法を一切、わたしにお任せ下さいな――そうして白骨から白川で落着いて、そこがほんとうに住みよいところでしたら、一生をそこ
前へ 次へ
全514ページ中351ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング