った時、広小路の露店《ほしみせ》で狩野家を一枚買いました」
「そうですか」
「尚信とありますが、本物ですかどうですか」
「ははあ」
「その道の人に見てもらったら、わかりましょうが、あんまり安いものですからね。反古《ほご》同様の値段で買って来て、表装を直させましたら、見る人が賞めますよ。ですが、本当に見る人に見せたら何と言いますか。とにかく、絵を集めるのは楽しみなものですな」
 露店《ほしみせ》で買った狩野家を珍重がるこの人もまた、絵を愛する人であると思えば可愛らしいところがある。白雲の抛《ほう》り出した画帖を取り上げて、拝見ともなんとも言わずに適度にひろげて、二人が額を合わせてながめ出し、
「ははあ、よく描いてありますなあ、潮来《いたこ》ですな、ここは、十二の橋――舟、よく描いてありますな」
「なるほど、よくうつしてありますなあ」
「いや、お恥かしいものですよ」
と白雲も、自分の絵が存外、その人たちのお気に召したことに、多少の光栄を感じて謙遜する。
「どうして、どうして、立派なものです。失礼ながら、このくらいに描ける絵かきは、田舎なんぞにそうたんとは転がっておりませんよ」
「恐縮です」
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