必ずや二人ともに、腕に覚えあり余るつわもの[#「つわもの」に傍点]には相違あるまい――そうだとすれば、時にとってのよい見物《みもの》、場合によっては、仲裁の役に廻り、あたら両虎を傷つけないようの老婆心もあってよかろう――ともかく、行って見よう。しかし距離が――あれだけの距離、目分量で、十町余りはたしかである。
 これから、息をも切らさずに飛んで行っても、走《は》せつけた時分には、もう両虎ともに傷ついて起つ能《あた》わざることになっているか、一方が一方を処分し終った時になっている――そこで、あえて急ぐ必要はあるとしても、急いだ効果はないものとして、件《くだん》の小丘を、おもむろに下ろうとしていて、ふと首をめぐらした時、計らずも今度は、海上に於て異様なる黒一点を認めました。
 それは、海岸の陸に於て、目下見つつあった二つの黒影とは、比較を絶するほどに大きな黒影が、波を切って南に向って行くのであります。
「黒船だ!」
 白雲が眦《まなじり》を決してその黒船を睨《にら》んだ瞬間、ただいま決闘――と認定せる二つの人影のことは全く忘れ去りました。
「うむ、黒船だ」
 こんな大きな海上を走る存在物を
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