、空を行く雲と、梢に通う風の音ばかりと心得ているところに、海岸の砂浜に、ほとんど豆の動くが如き黒一点を認めて、白雲は直ちに、
「人だな……人間に紛れもない」
と、かえって人間の存在することに、驚異の眼をみはりました。
 暫くは静止して、その黒点を注視していましたが、その動いている黒点が、離れたり附いたりするうちに、たしかに二箇は存在することを確認しました。
 なお見ているうちに、極めて少しずつではあるが、右の二つの黒点が、こちらに向って近づいて来るのだということを、見損ずるわけにはゆきません。
「はて、漁師かな」
 漁師にしては舟が無い、と見ているうちに、その二つの影がようやく、はっきりする。二つの人影が、棒を以て渡り合っている――と白雲はそう思いました。多分、棒だろうと思われる、そうでなければ然《しか》るべき得物《えもの》――武器でなければなるまい。それを持った二人が、附いたり離れたり、ある時は飛び違ったり、走《は》せ出したり、また飛び戻ったりする。なお注視するところによれば、その二人は、いずれも武装している、武装でなければ旅装である。足は相当にかためられていることは争われない。
 
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