揄《やゆ》を試むるところであろうけれど、駒井は、それをもてあまして、ああ、昨夜の出来事から、ぶり返した、せっかく、常識にかえりかけた女の調子を狂わせてしまった……不快に堪えない心が募ってきたと見え、
「お前の考えは無茶だ、まあ、深く考えないで、静かにしていたまえ」
こう言って、自分の座敷へ帰って来ました。
午後になって、雨がはれたものだから、駒井は、造船所の方へ見廻ってみると、みな、威勢よく働いて、仕事はめざましいばかり進んでいる。
小休みの時に、駒井の周囲《まわり》によって、皆の話題は、出奔のマドロスと、その悪口とに集中する。
ここの連中も、惣出で手分けをしてマドロスの行方を探してみたのだが、無効に終ったのだ。
あの毛唐《けとう》め、存外、兇暴性と、泥棒根性とを持っていることをみんなが言う。あんなのは結局度し難い奴で、最後には大迷惑を与える奴に相違ない。海へ抛《ほう》り込むわけにもゆくまいから、所払いを食わしてしまうに限ると主張する者も出て来る。
そうして、駒井は夕方陣屋へ帰って来て見ると、庭を透《とお》して、兵部の娘の室では、娘と茂太郎とが何をか合唱しているらしい。嬉々
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