ます」
「それはいけない、昨夜のことが祟《たた》ったのだ」
と、駒井は慰めるつもりで、そう言ったが、それを言ううちに、一種の不快な気分を如何《いかん》ともすることができません。
「そんなこともありますまいけれど……」
と答えて目をそらした娘の言葉も、冴《さ》えない。
「ゆっくりお寝みなさい、何か薬をさがして上げましょう」
「有難うございます」
しとやかなお礼の言葉。
駒井は、この女が、もはや全く平常の心持を取返しているということを、この時も、つくづくと思わされます。
かつての昔のような狂態は、少しも見ることはできない。しとやかな、恥を知ることの多い処女性の多分を認めるほど、かえって昨夜の変事が無惨《むざん》でたまらない。
そこで、暫く沈黙の重くるしい空気のうちに、駒井は立ち上り、
「大切にしておいでなさい」
その立ちかかった時に、もゆる子は、涙ながら向き直って、
「殿様、わたしは、昨晩寝ないで考えさせられてしまいました」
「何を」
「いいえ、いろいろの事について、考えさせられてしまいました、そのうちでも、あのマドロスさんのことねえ」
「うむ」
「ほんとうに憎い奴、ゆるせない人
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