が存在すれば、マドロスは一たまりもない。白雲によって悪い方は慴伏《しょうふく》される。悪い方が慴伏されると勢い、いい部分だけの能力を現わすから、マドロスを抑えるには白雲に限る。ところがそのマドロスをおさえの役は只今、銚子から利根、香取、鹿島に遊ぶといって出て行ったきり、まだ帰って来ない。当人、日を限ってはいたが、いつ帰って来るか、ちょっと当てにならないものがある。
 今夜のような醜態を、かりに白雲に見られたとすれば、マドロスは有無《うむ》をいわさず、叩き起されて、二つや三つのびんた[#「びんた」に傍点]を食《くら》うことはわかっている。
 その荒療治は、駒井の得意とするところではない。
「さて、どうしてやろうかな」
 この際駒井が、ふいと、心頭を突かれたのは、いつぞや、あの大嵐の前後、難破船から投げ出されたお角という女を、平沙《ひらさ》の浦から拾い上げた時、前後して、自分の手許《てもと》から消え失せて、全く行方不明な船大工の清吉のことです。
 清吉は朴訥《ぼくとつ》な男、造船工事では自分の右の腕としていた男だが、あの際に、行方を見失ってしまった。死んだものなら、死んだと見きわめをつける
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