は、つまりその有無の境がハッキリしたというだけの意味だろうなあ。つまり、お前の目をつけた代物《しろもの》が、現在でも存在しているか、いないか、存在しているとすれば、どこにあるか、その当りがついたというわけだろう。まさか、いくらお前でも、まだその現物を手に入れたというわけじゃなかろう、どんなものだ」
「お察しの通りでございます」
「うむ、実は拙者もお前からの頼みで、あちらこちらを聞き合わせてみたがな、秘密中の秘密といったようなわけで、要領を得たような得ないような、近頃の難物だが、そのうちの幾つかは、あの才物の勝安房《かつあわ》めがたしかに押えているという話も聞いた。また小栗上野《おぐりこうずけ》が、ひとりで、そっと持ち出して赤城山の麓にうずめて置くなんて、まことしやかに言う奴もある……」
「いや、どうも、いろいろの取沙汰はございますがね、なぜか存じませんが、残っているには残っているに相違ございませんな。残っていさえすれば、ちょっと一枚だけ暫時拝借してみたいなんて、だいそれた御本丸まで忍び込むなんぞと、ずいぶん、七兵衛も高上りを致したもんでございますが、成上り者の地金は争われません、それは
前へ 次へ
全514ページ中266ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング