「どう致しまして、わたしなんぞに、あのお嬢様をお引廻し申すなんて、そんな力があるものじゃございません、わたしどもこそ、お嬢様から引廻されているようなものでございますが、それでも多少年の功で、おとなしく引廻されているところに御贔屓《ごひいき》があるんでしょうと存じます。とにかく、おすすめ申してみることはみましょう。ほんとに旅ほど気晴らしなものはございません、お嬢様のお気に向くかどうか、それは存じませんが、おすすめ申すだけはおすすめしてみましょう」
こういうふうに答えて、お角は、お銀様に向い、一通りのゆくたてを話した後に、改めて、それとなく父の希望を、自分の希望として、お銀様に旅の誘いをかけてみました。
お角の説きつけぶりがよかったせいか、お銀様の風向きがよかったのか、すらすらとお角の誘引に乗出したのが不思議なくらいでありました。
「そうですね、そう言われると、東海道の道中は面白そうですね、名古屋の踊りも見たい、お伊勢参りもしたい、奈良や、京都や、大阪、なんだか物語でなつかしがっている風景が、眼の前へ浮いて来るように思います。お前さんとなら安心だと思います、一緒につれてもらおうか知ら
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