京大阪は、ほんの目と鼻、京大阪へ行った日は、金刀比羅様《ことひらさま》ということになりましょうから、ひとつこの際、奮発して出かけてみましょうかね。遊びですよ、遊びに出かけるんですよ、西国巡礼に毛の生えた物見遊山でございますよ、決して仕込みに行くのじゃありませんよ」
こう言って、お角さんは、若衆《わかいしゅ》の七公だけを一人つれて、気散じに出かけたものです――その途中、表東海道を通る順だけれども、かねがね、恩顧にあずかっている有野村の大尽様に、ご無沙汰のおわびをし、兼ねて、このごろは家に帰っているとの通知を得たお銀様にも会って行きたいし、そんなこんな事情から、甲州街道を取って、ひとまずこの地へ立寄りをしたものですが、これから後は富士川を下って東海道筋へ出るか、あるいは諏訪へ出て飯田から名古屋方面へ出るか、それもまだきまっていないらしい。
その一通りの道程を、お角はお銀様に物語る前に、伊太夫に会って、逐一《ちくいち》話してしまったのです。
伊太夫はお角のきっぷ[#「きっぷ」に傍点]を愛して、かなりの信用と、贔屓《ひいき》を払っている。今日、わざわざ道を枉《ま》げて尋ねて来てくれたこと
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