味に熱中している時、不意にこの熱中を破るものがありました。
ここでは絶対権を有するお銀様、来って触るるものには、暴君の威を示して粉砕するお銀様の興味を破るものは何、破り得るものは何。
それはもとより、父の干渉ではありません。父といえども、この領国に足を踏み入るることの危険は、知りつくしていなければなりません。否、父こそ最もその危険を知っているものといわねばならぬ。自然、善にまれ、悪にまれ、気まぐれにせよ、乃至《ないし》、狂気の沙汰にせよ、ある一つの事にお銀様が興味を持ち出したということは、父にとってむしろ勿怪《もっけ》の幸いであらねばならぬ。熱中の間にこそ、ともかく、一時的なりとはいえ、この暴君の境外進出が沮《はば》まれることになる。
それは、酒飲みに酒を与えて置くように、餓虎に肉をあてがって置くように、飽いて後の兇暴は知らず、ありついている間の平静を喜ばねばならないのが、父伊太夫の立場です。
況《いわ》んや、その他親族、家人らに至っては慴伏《しょうふく》あるのみで、誰ひとり、お銀様に当面に立とうという者があろうはずがありません。さればこそ、この暴女王の絶対権を干犯《かんぱん》
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