夫を毒殺して男と逃げたという良家の家附きの女房。
 娘の婿を奪って、娘を川へ突き飛ばしたという後家さんの名。
 美人局《つつもたせ》で産を成したという、強者《したたかもの》。
 夫の情婦をつかまえて来て、焼火箸で突き殺したという武勇伝の女主人公。
 強姦されて出来たという子を殺した娘。
 曰《いわ》く、何、何……
 お銀様としても、多年、左様な淪落の罪悪史を聞いていないことはない。また人の口の端《は》から口の端へと上って成される三面記事を、かなり読ませられていないではなかったが、いざ、目的を以て調べ上げるということになってみると、その材料の蒐集にはかなり不足を感じてきたようです――そこで、例の女中共に強圧命令を下したり、小作連に酒を飲ませたり、甲府から来る石工の若いのを誘惑したりして、その口からとめどもなく、その醜い方面の風聞の募集に取りかかりました。
 この計画はかなり図に当ったようです。夜もすがら、酒を飲ませ、肉を喰わせつつ、思う存分に、エロチッシュを語らせて、それを一室にあって盗み聞くお銀様は、かくてまたこの事に得ならぬ会心と昂奮とを覚えたようです。
 それを聞取ったお銀様は、
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