階を下りながら、
「は、は、は、は」
と高らかに笑って、同行の二人を驚かせましたが、別の仔細はありません。
 横町の二町目に店があって、親が聾《つんぼ》で、子もまた聾。ある時、親爺が忰《せがれ》に向って、忰や、いま向うを通ったのは八百屋の伝兵衛さんではないか、とたずねたところが、その忰が言うことには、なあに、お父さん、あれは八百屋の伝兵衛さんですよ、それを親爺が受取って、すました顔で、そうか、おれはまた八百屋の伝兵衛さんかと思った――という小噺《こばなし》を、この際道庵が思い出したから、それで不意に高らかに笑いを発したので、まあまあ、おたがいの勘違いのままで任せておいてみろ、宜《よろ》しきに引廻してくれるだろう、という気になりました。
 このお数寄屋坊主は、道庵主従を、その万松寺というのへ向けて引廻すつもりでしょう。
 程経て三人の姿を名古屋大路に見出したが、途中、仰山らしい人だかりに行手をはばまれて、背の高い道庵が、その人だかりの肩越しにのぞいて見て、思わず声を上げ、
「いや、奇妙奇妙」
と叫びました。
 そも、この中に何事があるかということは、道庵が見届けた通り、米友も見届けなけれ
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