馬に、もうこれ以上説くな、聞いていられない、という表情をする。
いよいよ、笑止千万《しょうしせんばん》に感ずる兵馬。
その時、仏頂寺が急に思い立ったように、
「どうだ、宇津木、これから白川郷《しらかわごう》へ行ってみないか、飛騨の白川郷というのは、すてきに変っているところだそうだ」
二十四
ここに不思議なこともあればあるもので、名古屋の城の天守閣の上に、意気揚々として、中原の野を見渡している道庵先生の姿を見ることです。
今時《いまどき》、尾張の中村で、豊太閤と加藤清正の供養を単独でいとなみ、容易ならぬ注意人物の嫌疑を受けて、脆《もろ》くも名古屋城下へ拘引されて来た道庵主従。
その嫌疑が晴れるまでは、相当の処分を受けて牢屋住まいをも致すべき身が、こうして青天白日の下に、名にし負う名古屋城の、ところもあろうに、天守閣の上へ立って、意気揚々として、遠く中原の空をながめているなんぞは、脱線ぶりとしても、あまりあざやかに過ぎます。
明治以後になって、あらゆる古城はみな解放されて、多くは遊客の登臨に任せている際にも、尾張名古屋の天守へは誰人も登ることを許されていな
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