「は、は、は、これこれ、これはまた古来、軍陣中無くてはならぬ一物となっている」
 二人は額をつき合わせて、この書物を見ながらしきりに笑っている。
 兵馬は、ただ苦々しい思いばかりしている。はしゃぎ廻りながら二人は冊子を見てしまうと、兵馬には見ろとも言わないで、そのまま、また鎧櫃の中へ抛《ほう》り込み、それでも感心なのは、いちいち二人でていねいに、もとの通り、鎧櫃の上へ、物の具を飾りつけて、薙刀も以前のところへかけ、そのついでに仏頂寺は障子を細目にあけて外を見まわし、
「いや、この分では大した降りもないようだぞ、明るくなっている、やむかも知れない。やむとすれば、この間に出立しようではないか。今から三人で押し出せば、少々遅着はするが飛騨の高山までは大丈夫。どうだ、宇津木、出かける気はないかい、多少の雪を冒《おか》しても、出立する気はないか」
「そうさなあ」
 兵馬も、ちょっと、返答に困りました。それは今日は籠城《ろうじょう》のつもりでいたから、天気に望みがあり、好きでも嫌いでも、こうなった退引《のっぴき》ならぬ同行者がある以上、ここに逗留をしていなければならぬ理窟はない、といって、この二人
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