兄のためにも、あなたのためにも、そのほか多くの人の魂が、彼のためにさいなまれていることはどれほどと思います。その恨みを晴らす役目は誰の仕事ですか、この年月、兵馬がこうして艱難辛苦《かんなんしんく》しているのも何のためだと思召《おぼしめ》す……」
「ホ、ホ、ホ、兵馬さん、それはわかっていますよ、お前さんが敵討をなさりたいために、今日までの苦労というは並大抵じゃありません」
「それが、わかっていらっしゃるなら、なぜ、そんな冷淡な口をお利きなさるのです、御存じならば早く、彼の在所《ありか》をお教え下さい、あなたに代って、私が、憎むべき彼を討取ります」
「けれども、ねえ、兵馬さん……私もあの人を善良な人だとは思っていません、憎い奴だと怨《うら》みながら殺されましたがね、今となってみると、やっぱり、あの人が好きなんですね」
「何を言うのです」
「憎めませんねえ」
「嗚呼《ああ》……」
兵馬は天を仰いで浩歎《こうたん》しますと、お浜は、いよいよ落ちついたもので、
「憎めません。憎めないのは、わたしばかりじゃない、兵馬さん、お前だって、本心からあの人を憎んじゃいないのでしょう」
「そんなはずがある
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