兵馬は、こんな温泉に一日――もし許すならば十日でも二十日でも滞在して、思うさまこの巌の間の湯につかっていたいというほど、いい気持のした温泉でした。
 案内した猟師は、そこから吹き出すのも、ここにたまっているのも、みんなお湯ですよ、まあ、もう少し進んでごらんなさい、天然の湯滝がありますから。湯滝は白骨にもありますが、あれよりズット大きい――といって、渓間を導いて、兵馬を二つの滝が女夫《めおと》のように並んでいるところへ連れて来ました。
「どうです、この二つの滝はみんなお湯でございますよ」
 それは高さに於て四間、幅に於て三尺ほどの、絵に見たような自然の滝。近くよってさわってみると、全くの温泉です。
 白骨にも湯の滝はあったけれど、あれは湯を引いて、人に打たせるように人工が加えてあったし、それと大きさから言っても、これとは比べものにならないのに、これは天然の滝そのものが全部の、自然の湯として現わされているのですから、兵馬は最初、滝の近く寄って、わざわざ腰を押しのべて触れてみようとしたが、ついに、たまり兼ねて行李《こうり》を捨て、帯刀を脱し、一切の旅装をかなぐり捨てて、その滝壺の湯に飛び込ん
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